ストレスチェックで高ストレス者が出た場合、会社が最初に確認すべきことは、「誰が高ストレスか」を把握することではありません。本人に結果を確実に通知し、本人が希望した場合に医師面接を受けられる導線を整え、面接後は医学的意見に基づき必要な就業上の措置を検討することです。
- 高ストレス者は、実施者が定めた基準により選定されます。会社が独自に判定するものではありません。
- 高ストレス者が面接指導を希望した場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。
- 個人結果は本人の同意なしに人事へ提供されません。面接申出があった場合も、共有範囲は必要最小限にします。
- 面接後は、医師の意見を踏まえて、時間外労働、配置、勤務時間、休業などの就業措置を検討します。
高ストレス者とは

高ストレス者とは、ストレスチェックの結果から、心身のストレス反応が高い、または仕事上のストレス要因と周囲の支援の状況を総合して、医師による面接指導が必要と実施者が判断した労働者です。単に「仕事が大変そうな社員」を人事が選ぶ制度ではありません。
高ストレス者が出た後の流れ
| 段階 | 実施者・会社が行うこと | 重要な注意点 |
| 1. 結果通知 | 実施者が本人へ結果と面接指導の要否を通知する。 | 人事へ本人結果を送らない。 |
| 2. 面接申出の案内 | 本人が申出できる方法・窓口・期限を示す。 | 申出しやすい導線とプライバシー配慮が必要。 |
| 3. 医師面接 | 申出があれば、事業者が医師による面接指導を実施する。 | 面接は高ストレス判定後、遅滞なく設定する。 |
| 4. 医師意見 | 医師が就業上の措置に関する意見を事業者へ述べる。 | 結果の詳細ではなく、措置に必要な範囲を受け取る。 |
| 5. 就業措置 | 事業者が本人の意見も聴き、必要な措置を決定する。 | 残業制限、業務調整、配置、休業等を検討。 |
| 6. フォロー | 措置の実行と経過確認、必要な再面談・支援を行う。 | 上司共有は配慮事項に限定する。 |
申出から面接まで:人事が整えるべき導線
- 結果通知の中で、面接指導の対象であること、申出先、申出期限、費用負担、プライバシーの扱いを明示する。
- 申出窓口は、直属上司ではなく、人事・安全衛生担当・外部システム等、本人が使いやすい経路にする。
- 面接日時は勤務時間との関係を整理し、必要ならオンライン面談の要件も確認する。
- 面接を受けたこと自体を人事評価・配置選定の不利益に使わないことを周知する。
医師面接で確認される主な事項
| 確認領域 | 例 |
| 勤務状況 | 労働時間、休日、業務量、夜勤、通勤、休憩、在宅勤務環境 |
| ストレス要因 | 役割の不明確さ、業務量、人間関係、ハラスメント、支援体制 |
| 心身の状態 | 睡眠、食欲、気分、疲労、身体症状、受診の必要性 |
| 職務適性 | 現業務の継続可否、短期的な負荷調整の必要性 |
| 支援策 | 受診、カウンセリング、休養、業務調整、上司への共有範囲 |
面接後の就業上の措置
医師の意見を受けた事業者は、必要があると認める場合、労働時間の短縮、時間外労働の制限、深夜業の回数減少、作業の転換、就業場所の変更、休業などの措置を検討します。措置は一律ではなく、本人の職務・症状・職場の受入可能性を踏まえて決めます。
| 状況 | 検討例 |
| 過重労働・睡眠不足が中心 | 時間外労働の制限、業務量・締切の見直し、休日確保 |
| 部署内の人間関係・ハラスメントが疑われる | 相談窓口案内、事実確認と切り分け、接触・配置への配慮 |
| 症状が強く就業継続が困難 | 主治医受診、休業を含む対応、復職支援の準備 |
| 一時的な適応不全 | 短期間の業務調整、定期フォロー、上司への配慮事項共有 |
会社がしてはいけないこと

- 本人の同意なしにストレスチェックの個人結果を取得・閲覧すること。
- 高ストレス者であることを理由に、評価・昇進・配置で不利益に扱うこと。
- 「高ストレスだから問題社員」と決めつけ、上司や同僚へ広く共有すること。
- 面接申出をした社員に対し、理由の説明を強く求めること。
- 医師意見を受けても、何ら検討・記録をせずに放置すること。
衛生委員会で扱うべき内容
衛生委員会では、個人が特定されない形で、面接申出の件数、面接実施状況、就業措置の傾向、集団分析の結果、職場環境改善の進捗を扱います。個人の氏名、ストレス結果、面接内容を議事録に載せないようにします。
よくある質問
Q. 高ストレス者が面接を申し出なければ、会社は面談を強制できますか?
A. ストレスチェック制度上の医師面接は本人の申出が前提です。一方で、勤務状況や本人の不調の訴えから安全配慮が必要な場合は、別途、産業医面談や人事面談を案内することがあります。
Q. 高ストレス者の氏名を上司へ伝える必要がありますか?
A. 原則として必要ありません。就業措置を実施する場合も、上司へは勤務上必要な配慮事項のみを共有します。
Q. 長時間労働の面接と同時に実施できますか?
A. 必要な確認事項を満たし、記録・意見書に両方の制度上必要な事項を記載できる場合は、1回の面接で兼ねることが可能とされています。
まとめ
高ストレス者対応の要点は、本人のプライバシーを守りながら、申出しやすい面接導線を作り、面接後の就業措置を確実に実行することです。個人対応に終始せず、集団分析から職場環境改善へつなげることも忘れてはいけません。
参考法令・公的資料
- 労働安全衛生法 第66条の10
- 労働安全衛生規則 第52条の14〜第52条の18
- 厚生労働省「ストレスチェック制度における高ストレス者への医師による面接指導実施マニュアル」
- 厚生労働省「こころの耳:長時間労働者、高ストレス者の面接指導について」
