月80時間を超える残業が出たら?産業医面談までの企業対応を解説

月80時間を超える時間外・休日労働が発生すると、企業は「面談を実施するか」だけでなく、対象者の把握、申出の案内、産業医への情報提供、面談後の就業上の措置までを一連で管理する必要があります。

本記事では、過重労働が判明した時点から、産業医面談、記録、再発防止策までの実務を人事・総務担当者向けに整理します。

  • 月80時間は過重労働リスクを把握する重要な目安であり、企業は労働時間を適切に把握する必要があります。
  • 面接指導の対象・申出・頻度は、法令上の要件と社内基準を分けて整理します。
  • 面談後は、医師の意見を踏まえ、労働時間短縮、配置・業務見直し等の就業上の措置を検討します。
  • 残業時間だけでなく、睡眠、疲労、連続勤務、業務負荷も併せて確認します。

月80時間超でまず確認すること

「月80時間」の意味を誤解しない

実務では、1か月当たり80時間超の時間外・休日労働は、脳・心臓疾患の労災認定基準や長時間労働者への面接指導の制度と関係する重要な目安です。ただし、80時間を超えなければ安全という意味ではありません。企業は労働時間の状況を客観的な方法その他適切な方法で把握し、疲労の蓄積状況も確認します。

確認項目人事が確認する内容
対象期間直近1か月だけでなく、2〜6か月の推移も確認する
労働時間時間外・休日労働、休日労働、深夜労働、持ち帰り残業の有無
勤務実態連続勤務、出張、夜勤、シフト変更、休憩取得状況
健康リスク睡眠時間、疲労感、既往歴、体調変化、メンタル不調の兆候
業務要因繁忙期、一時的案件か、恒常的な人員不足か

面談までの企業対応:5ステップ

  1. 労働時間を確定し、対象者リストを作成する。
  2. 対象者へ制度・申出方法を案内し、希望者が申し出やすい導線を用意する。
  3. 産業医へ、残業時間、勤務状況、業務内容、健康上の懸念を必要な範囲で共有する。
  4. 面接指導を実施し、医師の意見を受け取る。
  5. 意見を踏まえ、就業上の措置を検討・実施し、記録を残す。

重要

  • 面接指導を「面談実施」で終わらせないことが重要です。人員補充、業務量の調整、残業削減、勤務間インターバル、配置転換など、原因に踏み込んだ措置が必要です。

産業医に提供する情報

情報実務上のポイント
時間外・休日労働時間月別推移を示し、繁忙の一過性・恒常性を判断できるようにする
勤務形態夜勤・交代勤務・出張・在宅勤務等を明示する
業務内容負荷の高いプロジェクト、責任範囲、対人ストレス等を整理する
健康面の経過本人申告、欠勤・遅刻傾向、主治医情報は必要最小限かつ適法に扱う
既に講じた対策残業抑制、応援配置、休暇取得促進などを共有する

面談後の就業上の措置

  • 残業・休日労働の削減、業務量の調整
  • 深夜業・休日出勤の制限、勤務時間の変更
  • 一時的な配置転換、在宅勤務や通勤負荷の軽減
  • 受診勧奨、保健指導、継続フォロー
  • 組織的な業務分担・人員計画の見直し

月80時間を超えた際のNG対応

  • 本人が希望しないからと案内をしない
  • 面談の結果や医師意見を人事評価に利用する
  • 残業時間だけを見て、睡眠や業務負荷を確認しない
  • 産業医に必要情報を渡さず、形式的な面談にする
  • 面談後の措置・記録を残さない

よくある質問

Q. 月80時間を超えた社員は必ず産業医面談が必要ですか?

法令上の面接指導の対象や申出要件を確認する必要があります。一方、企業としては法定対象に限らず、健康リスクが懸念される社員に相談機会を用意することが望まれます。

Q. 本人が面談を希望しない場合はどうすればよいですか?

申出制度や相談窓口を周知し、面談機会を確保します。緊急性の高い健康リスクが疑われる場合は、就業上の安全確保の観点から個別に対応を検討します。

Q. 80時間未満なら対応不要ですか?

不要ではありません。長時間労働が継続する、睡眠不足や不調がある、夜勤・連続勤務が多い場合には、早期対応が必要です。

根拠法令・参考資料

  • 労働安全衛生法、労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
  • 厚生労働省「職場における労働者の健康確保のために」
  • 厚生労働省・都道府県労働局の産業保健、長時間労働者面接指導に関する案内
  • 個人情報保護委員会「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」

産業保健体制の整備でお困りの企業様へ
産業医の選任、長時間労働者対応、衛生委員会の運営、健康情報の取扱いは、制度だけでなく自社の実態に合わせた運用設計が重要です。契約範囲や社内体制を整理したうえで、必要な支援をご検討ください。